闇の底で
「バグダッシュ中佐、貴官は滑って転んで頭を打って2週間昏睡状態だった」

 シェーンコップの言葉に思わず「あんた、ばかぁ!?」とでも言いたくなったが、真実はもっと莫迦らしい気もしたのでやめた。
 どうやら自分がスパイだという確実な証拠は見つけられなかったようだが、こちらにもスパイである事を否定できるような物証はない。
 疑いを持たれてしまった今では、ヤン・ウェンリーに近づくのも難しいだろう。

「貴官が寝ていた時の事を教えてやろう。11艦隊は壊滅、それにハイネセンのスタジアムで虐殺事件が起きた」
「……なんですって?」

 一度離れた民心は簡単には戻ってこない。
 だからそれだけは、絶対にしてはならない事だった筈なのに。
 自分が眠っている間に、墓穴は掘られていたようだ。

「どうした?」
「…身体が萎えて上手く動かない」
「そうだろうとも。特別に俺がリハビリにつきあってやろう」


 全く物好きな男がいたものだ。
 一度じゃ飽き足らず、二度も自分を抱くなどと。
 断らない自分も物好きだといえるが、これは逃げられる気がしなかっただけだ。
 …あるいは、投げやりになっていたか。
 場所を男の部屋に移してシャワーを浴びる。
 鏡に映った自分は、少し痩せたようだ。
 バスルームを出てすぐキスをされた。
 歯列をなぞる舌がくすぐったいが、顎を固定されているので逃げられない。
 とは言っても、舌を思い切り噛むくらいは出来た筈で、この男に何を期待しているのだろうと自問した。
 長い口づけは唇の端から溢れた唾液が顎を伝うのが気持ち悪いと思ったところで終わった。

「ーーーっ!!」

 自分に経験が少ないとはお世辞にも言えない。
 それでも雄を受け入れるにはそれなりの労力と手間が必要で、それはシェーンコップも十分理解している筈だ。
 筈だというのに、この男は!

「…っあ、ああ、…や、め…っ」

 根性悪く、ナカをがんがん突き上げてくる。
 これのどこがリハビリだというのか。
 文句も悲鳴も途切れて伝えられず、爪を背中に突き立てることでしか抗議できない。

 全てを、忘れられそうな気がした。
 忘れて、何になるというのだろう。

 まだ、戦える。
 諦める事も、立ち止まる事もまだ許されない。
 救国軍事会議はもう終わりだが、自分はおそらく生き残る。

「……ぁああああっ!!」

 二人揃って達する。
 シェーンコップが心配そうな顔なのが、おかしくてたまらなかった。

コップとしてはバグに投げやりにならないでほしいなって思ってる話しだったはず。。。




















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