幸運の鍵
バグダッシュ中佐がクーデターの証言をする。
効果的な作戦であるし、これ以上の人選もないだろう。
だがこの事によってバグダッシュの命がクーデター派の人間に狙われる事はないのだろうか。
それともバグダッシュは捨て駒として良いという判断をしたのだろうか…そこまで考えてアッテンボローは軽い自己嫌悪に陥った。

ヤン先輩は、そんな人じゃない。

問題は周囲のバグダッシュを見る目と、自分の見方が大きく異なっている事だ。
計算高い転向者、生きる為に主義主張を変える信用出来ない女性軍人。
だがアッテンボローにとっては、トラウマを抱えたか弱いレディだ。

「何の鍵です?」

アッテンボローから渡された錆びかけた鍵を、バグダッシュは物珍しげに見つめた。
現在はカードキーが主流で、金属鍵はあまり使われていないのだ。

「幸運のお守りさ、この件が片付いたら返してくれよ」

いいのか、と確認しようとしてバグダッシュは口を噤んだ。
アッテンボローが自分の身を案じてくれているのに気がついたからだ。
変わった男だとは思うが、悪い気はしない。
受け取った鍵をドッグタグと一緒に首からかければ、ほんわりと胸があたたかくなった。

時間があったら、海に行こう。

まるで恋人同士の様な約束を交わして歩き出す。

各々の戦場に向かう為に。



end



















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