アイラヴユー
急にヴィジフォンを繋いで会いたいなんて言ったら。
貴方は一体、どう思うのでしょうね?


クーデターの後処理のため、ヤン艦隊はしばらくハイネセンに留まる事になった現在、家族と離れていた者は殆どが実家へ戻っていた。
だが、バグダッシュには家族はいない。
官舎の掃除を軽く済ませ、静かな時間を過ごしていると、言いようのない寂しさがわき上がってきた。

「……ダスティ」

あの男の何気ない優しさにどれだけ癒されてきたか、思い知らされる。
他人を求める事などないと思っていた心が、会いたいと叫んでいた。
預かった鍵を握りしめ想いを押し込めようとすればするほど、僅かに頬を赤らめた笑顔を思い出してしまう。
泣き出しそうになった瞬間、ヴィジフォンがけたたましく鳴った。

「…どうなされました」

もっと可愛い言い方もあるだろうに、つい冷たくなってしまう。
そんなバグダッシュをアッテンボローは顔色が悪い、目が赤いと心配した。
元凶が自分にあるとは思いもしない発言が、腹立たしくも愛しくもある。

「海に行こうって言っただろう」

あの冗談めいた約束は、どうやら本気だったらしい。
明日迎えに行くから、そこで通信は切れた。

黒い画面を見ながらバグダッシュは、明日を待ち遠しく想った。



end



















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